5人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
この二番手があればこそ, 2007-01-02
「豊臣秀長」は、戦国時代を書いた小説の中でも、特に上位に入れていい本だと私は思っている。
「秀吉」でなく「秀長」を主人公に据えたこと、これだけで評価に値する。
もちろん、秀長は秀吉の裏方であったのだから、小説では兄秀吉の行動が中心になるが、ほとんど重視されたことのない秀長という人を、これほど愛情をもって描いた小説を他に知らない。
これは、著者自身が「トップではなく二番手以下」と己を位置づけていることと関係するのだろう。
私はこの小説で、「優秀な組織は二番手が優秀なのである」ということを知り、さらに実生活でもそれを体感するに至り、著者の炯眼に頭を垂れる思いである。
何より、堺屋氏の秀長(小竹)に対するきめ細かい人物描写といったら、想像が何%なのか知らないが、「小竹はこういう人だったに違いない」と膝を打ってしまうほどだ。
丸顔で、人当たりが柔らかく、常に兄を立て、最も優秀な部下でありながら決して兄を裏切らない。
この弟あっての兄であったのだなあ、と感慨を深くする。
「優秀な組織は二番手」をいうのに、これ以上説得力のある例はない。
大河ドラマで高嶋弟が演じていたことがあるが、顔は到底似ていないにしても、その存在感は、戦国時代を描いたドラマの中では比較的堺屋版「秀長」に近いのではないか、と思う。
朝鮮出兵だの利休切腹だのと、秀吉にとって不名誉な事実が記憶されているのはいずれも秀長の死後である。
私ですら、「秀長様が、ご存命ならば」と思ってしまうのだから、当時を生きた人々はなおさらであっただろうと想像される。
堺屋氏と同じく、私も二番手タイプである。
小竹の人生は、はからずも二番手となり、それを全うした大いに意味のあるものであった。
彼に子がなかったこと、倹約により財を残していったことを思うと、涙が出る。
10人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
補佐役, 2002-09-07
今まで取り上げられなかった豊臣秀吉の弟『豊臣秀長』を
世にしらしめた一冊です。竹中直人が『秀吉』を
高島政信が『秀長』を演じた大河ドラマの原作のひとつでした。
100戦不敗。大納言。116万石の大領を得て、当時、家康を
超える地位にあった彼の非凡な統治能力、調整力、戦闘組織
の管理能力、そして何より補佐能力に驚きます。
この本は、秀長や登場人物の心の動きだけでなく歴史的考察
や組織・人事の視点が入っておりいろいろな角度から楽しめます。
NO2でもない、一部隊の長でもない、補佐役という彼の行き方。
兄と同体化するという補佐役に徹し、歴史に名を残さなかった
偉人の物語です。
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
裏方の生涯。, 2009-11-23
他の本では「秀吉の智謀」の一言で済まされてしまう羽柴軍の目覚ましい働きが、
どれほど辛苦に満ちたギリギリの作戦であったかが分かる。
巧妙な作戦にも地道な準備や忍耐力が要るのであって、
秀吉が決して魔法使いでないことが分かる。
秀吉とともに苦労し、耐え忍びながら実直に生き、功績は全て兄に譲った。
それが「この人」なのである。
特に筆者が経済人であることから、
文学系の作家に欠けている金銭的な視点が作中でよく生かされていると言える。
「この人」もまた裏方として金策に並々ならない苦労をした。
鳥取城の兵糧攻めで鳥取城近辺の兵糧を買い集めたときや、
高松城の水攻めでダムを作ったときなどは、えらくお金がかかったらしい。
それでも「この人」はよくそれをこなしたが、表立った評価はされなかった。
「この人」は常に地味で謹厳であった。
そのため、策謀をひけらかす黒田官兵衛が小賢しくて浅い男に見えたらしく、
この本では、官兵衛に対する「この人」の評価は、秀吉と違って冷淡になっている。
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
裏方の生涯。, 2009-11-23
他の本では「秀吉の智謀」の一言で済まされてしまう羽柴軍の目覚ましい働きが、
どれほど辛苦に満ちたギリギリの作戦であったかが分かる。
巧妙な作戦にも地道な準備や忍耐力が要るのであって、
秀吉が決して魔法使いでないことが分かる。
秀吉とともに苦労し、耐え忍びながら実直に生き、功績は全て兄に譲った。
それが「この人」なのである。
特に筆者が経済人であることから、
文学系の作家に欠けている金銭的な視点が作中でよく生かされていると言える。
「この人」もまた裏方として金策に並々ならない苦労をした。
鳥取城の兵糧攻めで鳥取城近辺の兵糧を買い集めたときや、
高松城の水攻めでダムを作ったときなどは、えらくお金がかかったらしい。
それでも「この人」はよくそれをこなしたが、表立った評価はされなかった。
「この人」は常に地味で謹厳であった。
そのため、策謀をひけらかす黒田官兵衛が小賢しくて浅い男に見えたらしく、
この本では、官兵衛に対する「この人」の評価は、秀吉と違って冷淡になっている。
5人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
名補佐 - 豊臣秀長の真の「最後の苦闘」, 2004-07-04
名補佐秀長を発見した境屋氏の名著だが、賤ヶ岳の合戦を「最後の苦闘」とし天下統一が完了した時点までしか筆が及んでいないので、その後の秀長の真の「最後の苦闘」について述べる。それは「征明」の問題である。海外出兵について家康や利家までが沈黙を決め込むなか、ひとり秀長だけが「暴挙」であるとして断固反対したのである。せっかく全国を制覇したのに海外出兵などとんでもない。今こそ内治を充実させ豊臣政権を安定させ、外には貿易を盛んにして富国の道を歩むべきである。恩賞の領地が足りないのなら自分の大和の所領を返上するから、それを分け与えればよいとまで言い切った。二人三脚で天下取りの道を歩んだ秀長にとり、無用な負担を強いる海外出兵など賛成できるはずがなかった。事実秀長存命のうちは秀吉は出兵できなかった。二度の朝鮮侵略の失敗のあと豊臣恩顧の武将らは文治派と武断派に分裂、各個家康に屠られた。名補佐秀長の予想は辛くも的中したのであった。
4人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
戦国入門書としてお勧めです, 2006-08-03
この小説は主人公の一人称視点でも、三人称視点でもなく、作者視点で描かれています。
最初はちょっと鼻につきましたが、これはこれでありかな、とも思いました。現代の視点から戦国を考察してるので歴史に触れたい中高生にお勧めです。
ただ、上下巻とも秀吉の足跡を追ってるだけなので歴史に多少でも知識のある人にはつまらないかもしれません。
もうちょっと豊臣政権下の大和大納言秀長の活躍を描いてほしかったです。
5人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
組織の補佐役としてかなり参考になる, 2003-02-02
秀吉の補佐役として非常に大きな活躍をしたが、現代においてはあまり知られていない秀長について書かれた良著。常に成長を続ける羽柴家のいわば専務的な役割を担っていた。もし彼がいなければ秀吉は天下を取ることが出来なかったと思われる。組織において補佐役を担う人間としては非常に参考になる。また、秀吉だけでなく信長の様々な能力についてもかなり客観的かつ鋭い分析がなされている。信長は軍事、経済、財政のみならず芸術、文化においても幅広く社会を改革しようとした「天才」であることがこの本を読んで理解できた。
8人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
思っていた程では, 2005-06-25
堺屋氏の本は、歴史上の事象に組織論や経済論で解析する。いつも生き方や考え方に成る程と感服してきた。
秀長はNHKの大河以来一度は読みたいと思っていた。
しかし、その期待は裏切られてしまった。ナンだろうよくわからないがつまらない。もっと秀長に生き生きとした人間性を与えて、もっと自由に演技させて欲しかった。
所詮は秀長は天下一の名脇役?、それをそのまま表現してしまったのかもしれない。秀長に視点を合わせたのは評価できるが・・・
信長や秀吉には小説でも叶わないのは悲しい。
17人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
普通の太閤記の視点をかえただけの駄作, 2001-08-18
常に秀吉のかげでナンバー2でありつづけた秀長。そのナンバー2として在り方に着目した点、彼が長生きし続ければ歴史の流れもかわったといわれつつ特にクローズアップした作品がなかったことから非常に注目した作品。
しかし、そこにあるのはいわゆる太閤記、秀吉の業績を秀長の目を通して書き直しただけの作品。また、見方は自由だがとくに目立った記録のない竹中半兵衛を軽く扱う等あいかわらず歴史の行間に思いを馳せない作品は悲しい。 官僚的、ビジネス的な捉え方は「峠の群像」「大いなる企て」で大いに感服した。その先がないのが非常に悲しい。
Revilist, developed by
yto and powered by