69人中、64人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
知性ある真の愛国者・佐藤優氏, 2009-02-25
佐藤優氏は外務省のノンキャリアでロシア大使館での仕事に従事した後、日本に戻って特殊情報(いわゆるインテリジェンス)担当となる。
外交というものはあくまで国益を追求すべきものだから、必ずしも正々堂々がいい訳ではない。北方領土も、現状を踏まえて且つ相手国たるロシアが本質的に求めるものは何か、を追求しつつ、政治と経済と組み合わせて交渉するのが正しい。
佐藤氏はインテリジェンスの内でも、それまでの経験を活かしたロシア、東欧の仕事が主となる。そしてロシアといえば北海道出身の議員、鈴木宗男氏。「ムネオ・ハウス」なんかで有名になった人。結局佐藤優氏は盟友ともいえる鈴木議員に連座する形で起訴された。
僕はこの本を読むまで鈴木宗男氏は利権をむさぼる汚い奴と思っていた。そして連座した佐藤優氏も典型的な世の中の常識からずれた外務官僚と思っていたが、この本を読んで、それが誰か及びマスコミによって作り上げられた歪んだイメージで、真実はこの本に書かれていることの方が近いと感じた。鈴木氏は利権をむさぼる人ではない。また佐藤氏担当検事の西村氏も指摘していたように、鈴木氏はその政治力、押しの強さ、理念を実現できる強さから多欲な他人、たとえば田中真紀子から嫉妬を受け、しかも鈴木氏自身の欲が少ない為、そのような嫉妬自体に気がつかない。従ってその地位から引きずり下ろされたという。
鈴木氏は立派な政治家だ。そして鈴木氏とタッグを組んで日本の国益の為に頑張った佐藤氏も立派だ。二人とも真の日本男児といえる。
一方の魑魅魍魎、事なかれ主義、必要な時には鈴木氏に土下座してまで従う姿勢をとりながら、いざ鈴木氏が訴追されると、「鈴木氏の強いプレッシャーによってあんなこと、こんなことをさせられた」と掌を返したようなことをする外務官僚たちとは対照的だ。
僕が興味深かったのは検察官同士のこの会話だ。「この国=日本の識字率は5%以下だからね。新聞に一片の真実が出ているもそれを読むのは5%。残り95%の世論はワイドショーと週刊誌によって形成されるのだ」。
鈴木氏と佐藤氏とが国策捜査の対象になったのは、「時代のけじめ」のためだと(検察官が)いうが、それを望んだのは僕ら一般国民の空気だ。マスコミのもたらす表面づらをなぞった情報でもって二人を断罪しようとしたから特捜が動いたのだ。
その意味ではワイドショーと週刊誌によって物事を判断する低俗な僕らが彼らを獄に追いやったともいえる。
僕らは猛烈に反省しなければなるまい。
32人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
曝け出された国策捜査の実態と目的, 2008-08-07
情報専門家として国家の権力を知り尽くした著者は、「国策捜査に巻き込まれた以上、勝ち目は無い」と考える。その上で、検察との心理ゲームにおいて、事実と異なる供述をすることなく、被害の最小化を図る筆者の胆力が、著者の情報専門家としてのキャリアや美学を良くあらわしている。
検察側が用意した穴(検察が構築したストーリー)を著者が選択するシーンを読むと、「検察=正義の味方」といナイーブなイメージを持っていたことを反省するとともに、それを助長している記者クラブに代表されるマスコミの問題点についても考えさせられる。なぜ、マスコミは、裏も取らずに、検察からのリーク情報を垂れ流しにするのか?公務員である検察が捜査・取調べ情報をリークし、世論を操作することは許されないはずだ。
今回の国策捜査の目的や背景に対する著者の見立てや、田中真紀子が外相となってからの外務省の混乱に関する記述も非常に興味深い。また、川上弘美の解説も秀逸である。
今後のニュースの読み方を変える、価値のある本である。
60人中、51人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
情報屋, 2007-11-11
ムネオ事件の内幕を赤裸々に綴っただけでも超一級の歴史資料。「国策捜査」の中身を知ると、あのマスコミのバッシングは何だったのかがよくわかります。そういえば、あのころ世の中おかしかった。小泉旋風と構造改革の熱が冷めた今、残ったのは著者が指摘しているナショナリズムとワイドショー政治だけなのかと思うと暗澹たる思いです。真面目にものを考えている人はどこにいるのだろうか。
読みどころは、拘置所に入ってからの検察官とのやりとりだと私は思います。誰もが拘禁症状に苦しみ、外に出たいと思う塀の中で、妙に生き生きしているのは、著者が生粋の情報屋だからです。情報屋にとって、情報そのものは問題ではない。情報のやりとり自体が問題なので、情報が入ってこない塀の中では、検事とやりとりするしかない。そこから意味を見出すことこそ、情報屋の情報屋たるゆえんです。情報の雑音も多い外部の世界から隔離され、一点にのみ精神を集中できる喜び。この部分の文章には、そうした喜びがあふれています。
驚くべき記憶力によって可能になった検事とのやりとりの再現によって、あの時なにが起こっていたのかという真実を知るとともに、喜びにあふれた文章を読めるという、読書好きならたまらない魅惑の本です。
40人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
知識欲を掻き立てられる本です, 2008-04-12
著者の本を読んだのはこの本が初めてだったが、詳細な事象に基づく淡々とした文章展開で、著者の知性の高さが感じられ、一気に読み終えた。政治とその裏で権力に平伏し自己保身に走る官僚の姿をありありと想像させられた。
田中真紀子が引き起こした外務省での騒動、鈴木宗男との確執、外務大臣更迭に至るまでの経緯など、一般に報じられていない内部事情を公開しており、こういう事実がもっと国民の知るところになるべきだと感じる。
日本国民は人気(にんき)ばかりで政治家を選ぶ傾向が多々あるが、あまりにも政治音痴過ぎるのもどうかと考えさせられる。「出る杭は打つ」という暗黙の風潮、成功者や目立ちすぎるものを妬む社会、日本が政治・経済の成長を停滞させている要因であり、将来を考えるとなんだか日本という国に対して悲観的になりました。私自身、海外生活が長くなりましたが、本帰国することは当面ないですね。
とにかく、読んで後悔する本ではありません。一読の価値はあります。
25人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
国策捜査とはー , 2007-12-17
“時代にけじめをつけるために政府は国策捜査を必要とし、ケインズ型路線からハイエク型路線へ日本の政治が移行するとき、その境界線上にいる鈴木宗男が葬り去られるしかなかった。 その渦中にいた自分も−” 実にショッキングな内容でした。 恥ずかしながら国策捜査なるものが何かも知りませんでした。さらに歴史上それが何度も行われてきたということも。
佐藤氏の考察が真実なのかどうかは私には知る由もありませんが、少なくとも当事者でありながら、獄中でこのような冷静沈着な考察をすることができる佐藤氏という人物にむしろ驚嘆してしまいます。 それに読んでいて面白いのは、大物政治家にせよ、検察官にせよ、ロシア政府の高官にせよ、佐藤氏と付き合いのある人達は、みなそれぞれ一本筋の通った人物ばかりのように見受けられるのですが、これはむしろ佐藤氏と付き合う人達自身、彼の前では誠実にならざるを得ないから−というのが理由であるような気がします。 それは佐藤氏が、一個の人間としていかに誠実に生きるか、日本の外務省員としてどうすれば良い仕事が出来るか、そして世界の平和のために何が出来るか−を、ギリギリまで自分に問うてから行動するが故なのではないかと推察されます。 かなり詳細な記録書ですが、私のような素人は細かい説明は多少飛ばし読みしても、そういったものを感じ取れただけでも収穫でした。
3人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「あなたは友だちを裏切らない」と検察官は言った、と書かれている, 2009-06-24
読了後、あたかも上質のハリウッド映画を見たかのような感触があった。見事な演出、と云うべきだろう。
著者を取り調べた検察官は言う。
「あなたが他の外務省の人たちや業者と違って、最後まで鈴木先生と切れなかったのは、対露平和条約交渉の盟友だったからだ。あなたは友だちを裏切らないし、盟友を見捨てない。そういう人だ。」
これだけであれば、まさにハリウッド映画のヒーローを髣髴とさせる話である。だが、著者は次のようにも書くのである。
「ソ連崩壊前後の種々な政治事件の目撃者となった経験から私は、盟友であった者を陥れようとする輩から、人心は離れていくという経験則を身につけていた。」
どんな経験則を身につけていると思っていたとしても、最悪の事態に陥らないためには、その原則を維持するだけの精神の強靭さが必要である。全篇を通して浮かび上がってくるものは、著者の、驚くべき勁さである。
有り体に言えば、著者は、勁さのゆえに、盟友であった者を陥れずにすんだ。拘置所で検察官と渉り合うことができ、敬意を勝ち取ることすらできた。実際には、ハリウッド映画のようなヒロイズムもロマンティシズムもなく、冷徹な自己を取り巻く状況についての洞察があった。
自己認識の一端として、著者は、かの検察官にこう言わせている。
「あなたにせよ鈴木さんにせよ、目的のためには手段を選ばず、平気で法の線を越えるので、僕はいわば法に対するテロリストとして、カネや出世を動機とする連中よりもより悪質だと自分に言い聞かせている。」
著者の徹底したリアリズムが、獄中での研究を可能にし、裁判における「被告人最終陳述」として結実する。国策捜査とはいかなるものか、頷かせるものがある。だが、著者の獄中生活におけるリアリズムが生んだ最大のものは、何と言っても本書であろう。国策捜査に人々がどのような形で関わっていたかが克明に記述され、その分析を通して現代が見えてくる。
3人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
過去と現在、そして未来を見通すのに使えるのではないか, 2009-04-13
鈴木宗男が糾弾を受けた事件でキーパーソンとして取り沙汰された人物、佐藤優氏の回想記。特異な出自、特異な才能で情報収集・情報分析・評価を生業にしてきたという氏の筆致には何かマニアックとでも言うほどの力強さがあり、論理的にも、行動的にも完璧な首尾一貫性がある。逆に、その首尾一貫性が強すぎて、この著作全体に虚構性すら読み取れそうなほどだ。勿論自分は、著者の誠実さを信じようと思う。金銭的にも、社会的にも失ったものに比べて得たものが遥かに少なく思えるからだ。この著作を書いて、好評を受ける保証は何もなかったわけだし。
内容についても、2009年現在の政治状況・経済状況・司法状況・メディア状況・社会状況を正確に理解するための枠組みがそこにはあって、これから起こりうること・できることを考えるにはいい材料になるのではと思う。新自由主義が政治・経済・社会そのほか、状況に関わる分野にパラレルに効いていて、排外的ナショナリズムが新自由主義の齎す軋みをマッサージするように補完的な役割を果たすといった見立ては、現状を読み解く基礎として使えそうだし、そんな危うい国家基盤の正統性を問い直せるかどうかはもうすぐわかることだ。
他の人が書いた本、「特捜検索の闇」「歪んだ正義」と併せることで「国策捜査」という言葉の意味とその起源・歴史はかなり詳しく理解できるし、本書を読んできっと佐藤氏のファンになる人も多いと思う。お薦め。
7人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
マスコミが報道しない真実を知るために, 2009-08-08
久々に読み応えのある本だった。決して本を読むのが遅くないと思う自分が、何回もの出張に持参して、やっと読み終えた。
3章までは著者が行っていた、普段あまり明らかにされることのない国の「情報戦」の実態について。ロシアに踏み込んだ内容なので、慣れてない人は読みにくいかもしれないが、外務省を巡るあの田中眞紀子と鈴木宗男の戦いの裏話は面白いし、ここでの伏線がその後の逮捕に繋がるので、読み飛ばせない。
4〜5章は「国策捜査」という名のもとで、「犯罪」がいかに作りあげられて行くかが綿密かつ迫力満点に描かれている。「国策捜査」が、どのような人を対象に、なぜ行われるのか、「冤罪」とはどのように違うのか、というポイントに対する検察と著者のやりとりは、大変面白い。
最後の章では、一般には知られていない東京拘置所での様子や生活、それに独房とはどういう所なのか、が描かれていて興味をそそる。特に「死刑確定囚」がどのように扱われているかに関するくだりは、胸に響くものがあった。
全体を通して、著者が優れた頭脳と見識の両方を持っている人物であること、そしていかにマスコミは信用できないか、ということが、よく理解できる。「国策捜査の対象は一流の人物なので、逮捕後もその能力を社会で活かせるよう、うまい形で再出発できるように配慮するのが、(国策捜査の)特捜検事の腕」というくだりがあるが、その通り、著者が文筆家や批評家としてではなく、もっと日本の核となる部分に一刻も早く復帰できる事を願う。
日本の真実(少なくとも、マスコミとは異なる視点)を知るために、少し難しいが、全ての方にお勧めしたい本。
7人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
佐藤氏のパワーに圧倒される, 2009-01-12
身柄を拘束された被疑者が、次々に検察が掘った穴に陥落していくなかで、超人的な精神力を持って否認を続ける、佐藤優氏のパワーに驚かされる。取調べの担当検察官である西村氏とのやり取りも、スリリングで興味深い。佐藤氏は、512日に渡る拘留期間にもめげず、却って、これを読書をし思想をする良い機会と捉える。
国家という組織の力を持って、国策で逮捕されたならば、あとは、検察官の作った作文に従って落ちるしか道はない。執行猶予という「弁当」を付けてもらって、第二の人生を歩むしか道はないのだ。それが普通であるのだが、佐藤優は、国家、国体維持のため、国益を第一として行動する。自分の身を守るために、供述するのではなく、日本におけるインテリジェンスの専門家として、筋を通して、検察側と対立する。
最高裁まで行っても、有罪の判決が出ることは間違いないが、数十年後に明らかになる外交機密情報によって、自分の主張が正しかったと証明されることを見越した上で、否認を続けるのだ。
本人は起訴休職中の外務省に戻る気はないようだが、このような有能な情報マンを失った場合の、日本の国益の損失は大きい。ただ、本人もこの事件があったおかげで、本の執筆や講演活動を行うことが出来て良かったと、ある講演会で話はしている。実に大局的で、前向きの解釈をする人だ。
この国策捜査の歴史的位置付けとして、ケインズ型公平配分路線から、ハイエク型新自由主義へと移る、「時代のけじめ」として行われたものだと分析しているあたりも、興味深い。さらには、国際協調的愛国主義から、排外主義的ナシュナリズムへと国際路線を変更するために、格好の事件となったとの記述もあり、なるほどと思わされる。
最後に、総理経験者にまで話が及びそうになった段階で、上の圧力で捜査にブレーキがかかった。最後まで国家権力によって左右された事件だったのだ。
7人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
国家について考える, 2008-07-19
とても面白い本です。外交・検察官の取調べ・政治家・国策などについて考えさせれる本です。特に被疑者と検察官との駆け引きは息詰まるような迫真さがあります。またロシア外交をめぐる秘話などとても興味深いです。非常に内容の濃密な本です。国家の真実を知るのに役立つ本なのではないかと思います。厚い本ですが、最後まで、飽きさせずに読ませてもらいました。著者の国家への姿勢は、終始ぶれなく一貫しているように思いました。その姿勢には、感嘆させられるものがありました。
2人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
運悪く国策捜査で逮捕された外務省職員による克明な手記, 2010-07-16
外務省のロシア専門家であり、国際情報収集と情勢分析のプロだった著者・佐藤優さん。
彼が2002年逮捕され、東京拘置所に勾留されているところから手記は始まります。
それは、「国策捜査」と呼ばれる「時代を転換するために必要な象徴的事件」
の被害者となった者の、悲劇の一部でした。
ロッキード事件、リクルート事件、最近では厚労省局長の疑惑事件。
いずれも「国策捜査」と言われていますが、それらを描いた手記の中では秀逸な作品だと思います。
特に、特捜の担当検事とのやりとりは非常に詳細で、臨場感があります。
さらに、著者や外務省の東郷氏、鈴木議員のロシアに対する深い知識・造詣は
ロシア人の性格・文化への深い洞察もあいまって、唸らされました。これぞ外交官です。
また、議員であれ、商社員であれ、日本国益を第一に考えて行動する。
そんな方々が逮捕される国策捜査とは何か。著者の分析も説得力がありました。
「出る杭は打たれる。」日本特有のことわざかもしれませんが、本当に打たれてもいいのか。
日本はこれでよいのか。そんなことを強く考えさせられる1冊です。
著者にはマスコミによって作られたイメージがありますが
それを抜きにして、一度は読まれることをおすすめします。
2人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
小沢vs検察?, 2010-02-20
小沢一郎という政治家を好きでもなんでもないけれど、検察の恣意性がここまで高まっている状況は危険だと
つくづく思う。「塀の中に落とす」という言い方がなんとも……。
2人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
驚異の記憶力, 2009-11-09
本書についてのレビューは書きつくされているので、私の感想は「記憶術」の視点から述べたいと思います。
過去の会話、特に拘置所内での検察官とのやりとりについては、著者の細部にわたる描写に恐れ入りました。職業柄当たり前だろうと思えなくもないが、記憶を定着させるために払っている著者の努力に敬意を感じます。コップの水の量を見て記憶植えつけることができるし、時計があればさらに正確に記憶することができるといいます。別の著書によれば、文書を丸ごと音で暗記する方法も挙げています。おそらくこれは、会話内容を後ほど数回頭の中で復唱しているのでしょう(フラッシュバック)。週刊誌に掲載された記事よれば、ロシア駐在時代に重要人物と面会するにあたり、主要紙に掲載されたその人物の演説原稿を丸暗記してから臨んだとのこと。そうすることでメモなしでも相手の意図するところを記憶することができたそうです。
もっとも大事な点としては「絶対暗記しなければ」という動機自体とのこと。すごい秘策があるわけではなく、地道な努力こそ大事なんですね。
5人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「国策捜査」を世に問う, 2009-05-03
「国策捜査」。世にその存在を広く知らしめたのが本書である。
2002年、「ムネオ事件」にかかわったとされ、逮捕・拘留された筆者は、検察官との厳しい攻防の中で告げられる。「これは『国策捜査』だ。」
この国策捜査との獄中・法廷での対決を描いた、当事者の証言であると共に、一級のドラマにも読める。
数々のエピソード・背景記述がとてもおもしろい。
まず、ムネオ事件発端となる、2002年1月の、アフガニスタン復興支援会議でのピースウウインズ・ジャパン外し事件。外務省が外す事を鈴木宗男議員に伝えたのは佐々江賢一郎審議官。その後六ヶ国協議首席代表。
取調べの間弁護人に要請した、クオーター化の原則。これは檻の中の者には極力情報を与えず、全体像に関する情報は弁護団だけが持つこと。
外務省が共産党に情報を渡すとき、後でバレたら公安警察が動く。だから、正義の告発者を装うための保険として民主党にも送った。
日本政府の中で、国際法や国際条約についての最終的な解釈権は外務省条約局長が持っている。
などなど・・・
なお、数々の裏切りの中、元上司の東郷和彦氏とのエピソードの結末は、「文庫版あとがき」まで待たなくてはならなかった。
5人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
日本言論界に突如出現した驚異の「スーパーノヴァ」!, 2009-02-11
私は、「佐藤優」に関しては、「遅れてきた中年」だ。
実のところ、普段、新聞からもテレビからもラジオからも週刊誌からも縁遠い生活をしている私は、外務省汚職の「佐藤優」事件は、全く無知であった。
ムネオに関しても、時代遅れの小型「田中角栄」程度の印象しかなく、しかも、北海道で再び選挙で当選し、日本人は芸能政治しかできないの? と端から馬鹿にしていた。
真紀子氏に関しても、なんで外務省と揉めているのかさっぱり理解できなかったし、昨今はほとんど脳髄に残っていなかった。
佐藤優との出会いは、皮肉なことに、「ラスプーチン」が取り持った。
ラスプーチンのことをちょっと調べてみようと思い、ネットでアレコレ検索しているうちに、本書のレビューにたどり着いた。そして、その「熱気」にびっくりしてしまった。
いまどきの日本に、これほど多くの人を真に熱くさせる文筆家がまだいたのか!?
それで、佐藤優とはどんな人なのか、是非自分も触れてみたくて、本書を手に取った。
…その結果、確かに皆が熱くなるのはよく理解できた。
私自身も、最初は睡眠薬代わりにと思い、夜寝る前にちょっとつまみ読みし始めたのだが、途中で、巻を置く事能わざる状態になってしまい、結局、翌日は勤めもあるというのに、明け方3時過ぎまでかかって、一気に読了してしまった。というか、させられてしまった。
これは、ブラックホール並みの重力と、驚くほどの知的魔術に満ちた本だ。
そして、多くの人が驚嘆と疑惑をあらわにしているように、佐藤優という存在は、はっきりいって日本文壇に於ける「スーパーノヴァ」だ!!
内容に関しては、他の多くのレビューが意を尽くしているとおもうので、私はただ一言。
この間までの私のように佐藤優が何者かまったくわからなかった人は、是非、本書を手にとって見てください!!!
15人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
面白い。読んでおくべき一冊。, 2008-03-17
本書を読むまで、私は著者を誤解していた。こういう内容の本が書ける程の人物とは思っていなかったのだ。今はその誤解を大変に恥かしく思う。
本書は、「当事者」が書いたものであるだけに、客観的な事実から程遠い認識も相当箇所存在するのだろうが、それを割り引いて見ても、大いに考えさせる内容である。勿論、「一人称で書かれた小説」として本書を捉える事も可能であり、また「そう考えても不思議でないほど面白い」のであるが、いずれにせよ、大変に興味深い内容である事は間違いない。
こういう人(良い意味でも、悪い意味でも)が外務省という役所で役人をやっていたのか‥と思うと、ちょっと愉しい。
11人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
元外交官の視点から見た1つの「真実」, 2008-04-19
外務省の現役官僚だった著者が、背任罪、偽計業務妨害罪に問われるまでの経緯と逮捕後の取調べや裁判の様子が、克明かつ臨場感たっぷりに描かれている。ただし、著者自身があまりにも優秀かつ冷静沈着で、私利私欲を持たない諜報部員007のように描かれているので、はたして本書に書かれている事実が真実なのか、どれほど客観性があるのかと疑ってしまう。田中眞紀子をして「伏魔殿」と言わしめた外務省という組織の複雑性や、一般市民の常識から乖離した内部抗争に関する記述は、その渦中に外交官として身をおいたことがある著者だからこそ知り得た事実であろうし、情報価値も高いと思う。著者が、外務省内部の構造を、批判も言い訳もせずに淡々と書いているのは、客観的に見ているからというよりは、著者自身が、かつてその一員として、その内部構造を当然のこととして受け入れ、活動してきたからではないかと思う。田中眞紀子については、あくまで「悪人」であることを前提に話が展開するが、この点についての記述が薄く、なぜ田中大臣があれほどまでに毛嫌いされ、外務省から排除されなければならなかったかについて、説得力を欠く。ここに、著者の「外交の専門家」たる元外交官としての傲慢さを感じる。
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
真のプロフェッショナルをそこに見た(見続けた)。, 2010-08-11
本書は前半と後半ふたつのパートに分かれると思う。前半、ロシアとの平和条約締結に向けての政治家と官僚のはたらきをつぶさに文章で追ううちに、今まで空想だにしなかったことが脳裏に浮かんだ。漠然とだけれど「国」とはいったい何なのだろうか、と。「国家」と言い換えても良いし「国益」とも同義かも知れない。ニュースや新聞雑誌ではそれはあくまで流動的であり、こころに留まることはなかった。佐藤氏の筆力と描かれる外交という内容が「国」に関する本質に注意を喚起させたのだと思う。これまでは日常のごくささやかな世界にしか関心を払わず、その外野のことは軒並み他人事であった。好むと好まざるとに関わらず私たちは国の構成員の一部であり、国家の支配下にあり国益の為に不利益を蒙ることがないとは限らないのだ。後半は検察官と佐藤氏の取調室を舞台にした会話に大半が割かれている。三谷幸喜の「笑いの大学」を思い出した。「時代のけじめ」としての「国策捜査」という「国家の罠」にはまった佐藤氏。ここで云う「時代のけじめ」とは何者の意思の表出なのだろう。私たち個人ではないだろう。本書を読んで初めて知る内容ばかりだ。そこで上記の問いが繰り返される。「国」の意思が時代のけじめを求めたとするならば、「国」とはいったい何なのだろうか。本書読了後、この世の中で一番怖いのは私たち個人個人ではないかと思った。「世論」って何だろう。本当にわたしたちの最大公約数的な総意なのだろうか。高度情報化社会の入り組んだ細分化された世界において私たちは基本的に無知である。そういう我々の「世論」は非常に危険な要素を孕んでいるのではないだろうか。マスコミとは不思議なシステムだ。一方で虚実入り乱れた情報を私たちにインプットしたかと思えば、本書のような回想録を出版する。それはマスコミの一方的なはたらきなのではなく、私たち個人個人の要求しているギブアンドテイクの関係なのか。もしそうであるならば、ここで云う「私たち個人個人」とはいったい誰のことなのだろう。肝が冷える本である。しかも知的好奇心を満足させてくれる一級の本でもある。
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
高度な知性に裏打ちされた文句無しの力作, 2010-07-03
この筆者の執筆活動、言論活動には賛否両論がある。インテリジェンス、国策捜査、対ロ外交に関する議論を喚起した一方で、特に外務省の内情を明らかにしたことや、鈴木宗男氏と緊密な関係を有していることから、政治的な敵対者からはとことん批判されているようである。しかし、これらを捨象し、本書の本としての質について述べるならば、これは文句無しの力作なのである。まず筆者の文章の知的さに驚かされない人はいないだろう。知的な訓練を受けたことがある人間であることは文章を読めば分かる。もともと知識人としてのバックグラウンドを持っていた上に、「投獄」という経験を通して、世の中を分析する視点が一層鋭利になっている。ドストエフスキーのように。
本書は単なる獄中記ではない。勿論、獄中生活の描写からは多くを学べる。しかし、それ以外にも本書は、インテリジェンス、政官関係、対ロ外交、外務省内の権力闘争、アカデミズムなど、様々な世界の内実を明らかにしている。特に、インテリジェンス、政官関係、対ロ外交については既に終わった問題ではなく、それどころか現在なおホットな問題であり、これからも重要になっていく問題である。これらの問題を考える上で、本書から得られる示唆は非常に大きいものがある。
個人的には、外務省の内情が赤裸々にされている点が面白かった。この筆者が抜群の情報収集力・分析力を有していたのは間違いないと思う。しかしながら、情報サイドの人間が対露外交という政策サイドの話に首を突っ込み(あるいは巻き込まれ)、政治家と緊密な関係を有したことが、外務省と筆者にとっての悲劇の源なのではないかと思った。情報と政策の分離はインテリエンスの肝であり、今や日本を代表するインテリジェンス・オフィサーと言われている筆者がこれを遵守できず、身をもってその重要性を示したことは本書の最大の皮肉であろう。
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
検事とのやりとりは一読の価値あり。, 2010-02-09
佐藤優たちは時代の流れに巻き込まれた。
そして、巻き込まれたのは彼らだけではない。
私たち自身もいつの間にか巻き込まれている。
決して他人事ではなく。
それにしても著者の記憶力は圧巻。
検事とのやりとりは一読の価値があります。
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
小沢不起訴の今こそ読むべし, 2010-02-06
しかし、こんな本、出回ってていいのか。
検察官が「国策捜査」を認めている記述がある。
政治的に興味深いネタ満載の上、
「著者と検察官のやり取り」とか「上司との関係」など、
「男の世界」の読み物としての出色の出来だ。
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
読む価値のある一冊でした, 2009-11-10
検事と外交官の高度な頭脳戦が濃密な筆致で描かれている力作です。文字通り国策捜査であることを指摘する佐藤優氏に担当検事もあっさり認めています。現実にそういう捜査が行われていることに目から鱗の思いでした。
ロシア情報の収集工作の一環としてイスラエルで国際会議を開催する費用を日本だけが資金を拠出しているという奇妙な国際機関「支援委員会」の資金で開催したことで背任に問われました。しかし本書にもあるようにロシアとイスラエルの人脈の深さを考えると少なくとも事件化するような背任行為とはとても思えません。まさに国策捜査といわれるゆえんです。
著者が鈴木宗男代議士と共同戦線を組んで展開した二島返還工作は、二島で十分というのではなくまず二島からという戦術が四島返還論よりも現実性が高いと踏んでのことだったという主張は真実味がありました。著者が国家の利益と信じるもののために寝食を忘れて仕事に没頭したのも恐らく事実でしょう。
ではなぜ著者が国策捜査の対象になったかといえば、目的達成のためには説得よりも恫喝を使う鈴木宗男氏の威光を日常的に仕事に使っていたこと、そして情報収集と分析というインテリジェンスの世界の人間が守らなければならない領域を超えて、政策実現のための政治活動まで領域を拡大したためではないかという印象を持ちました。有能な人物が勇み足で失脚してしまったのは残念でなりません。己の能力に対する過信があったのでしょうか・・・
1人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
佐藤氏の傑出した知性。, 2009-05-26
重厚で読みごたえあり
佐藤氏の傑出した知性を感じ
知的好奇心を刺激されました。
この本を読んで思ったことは、
物事の本質を見抜く力が非常に重要だ 。
ということです。
受動的に情報を受取り判断するのではなく
自分の眼で能動的に時代を読んでいかなければならないと思いました。
次作の『自壊する帝国』も読もうと思います。
14人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
愛国者ってこういう人なのかも, 2009-01-18
なぜあのときあれほどまでに鈴木宗夫がバッシングを受けたのかよく分かりました。そして、国策捜査という民主主義に対する挑戦もよく分かりました。大手マスコミがほぼ腐っている現状では、このような本を通じてしか事実に近づくことができないのは本当に恥ずかしい話です。国民の知る権利を侵害してるのは大手マスコミなんじゃないかと最近つくづく思いますね。どのような理由があるにせよ、簡単に権力に迎合し、その瞬間瞬間の事実をきちんと世に問うことができないマスコミなら、もう必要ないし、第4の権力を掲げるのはやめてもらいたいです。
まぁ、しかし一方で、人間が作る世の中なんて完璧じゃないのも事実でしょうから、真実は歴史家の手に委ねようという著者の姿勢に非常に好感を覚えます。
最後に、やっぱり最後まで筋を通す人間は格好いいと思いました。真の愛国者ってきっとこういう人です。読んで損のない本です。
7人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
官僚とは何か?, 2008-11-17
本来語るべきことを語らないままあくまでも自己保身の執念を貫き、それでいてなんと巧妙で様々な教訓に満ちた本だろう!
7人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
検察の捜査について好奇心がそそられる, 2008-06-22
ラスプーチン(1871-1916)・・・ロシア帝国崩壊の原因を作った祈祷者。
その題名から、日露関係に関する詳細が記述されているものと思い読み始めたが、
内容は鈴木宗男氏の贈収賄事件にまつわる真相を明かし、そこから国策捜査について考察するものであった。
第1章は、著者の逮捕前夜の状況から始まり、第2章以降は時計の針を戻して、
田中真紀子外相と鈴木元外相の確執と日露関係を通じて著者がこの政争に巻き込まれる経緯が書き進められていく。
その中には、ロシアの政治家の気質やゴルバチョフからエリツィン、プーチンに至る日露関係についてもできるかぎりの詳細が書かれており、興味深かった。
ただ、政治の権力関係や外務省内部のドロドロした人事の話にはあまり興味がなかったので、読み始めは興味よりもは嫌悪感のほうが強かったのも事実である。
そこから、俄然面白くなったのは、第5章以降に書かれている国策捜査の考察である。
「国策捜査とは、時代のけじめをつけるもの」であり、
「鈴木宗男事件とは、公平分配型の政治(小泉内閣以前の政治)から自由主義型の政治(小泉内閣の政治)への転換点におけるけじめであった」
というのは非常に興味深かった。
政治の転換点に時代のけじめがあるというのは、いつにおいてもそうだと感じられる。
昨今の安倍内閣から福田内閣の転換においても、あれだけの不祥事が立て続けに明らかにされたというのはなにか時代のけじめのようなものが感じられる。
そこから一歩先に進めて、安倍氏が組閣した人事を引き継いだ福田内閣では不祥事が全く起こらないというのもなにか納得がいく。
本書を読んでいて残念だと思うのは、検察の捜査にこれだけ冷静に対処している人でありながら、
あまりにも事件における自己の正当性や情報のプロであることを繰り返し強調されるので、
読んでいて自尊心が強い(プライドが高い)人という印象を持ってしまったこと。
ただ、ムネオハウスや疑惑のデパートなどと揶揄された鈴木宗男氏の再評価ができたのは非常に良かったと思う。
過去のロッキード事件やリクルート事件に関しても、分析した書物があれば機会を捕らえて読んでみたいと思った。
46人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
文庫化だと!, 2007-10-29
この超が付く名著が文庫化ですよ。こんなことしていいんですか?(笑)佐藤優ファンは持ち歩き用に買ってもいいんじゃないですか?少なくとも俺は買います。
「罠」は我が国のトップインテリジェンス佐藤優を一躍有名にした書であり、佐藤のみならず鈴木への風向きを変え、政策転換のために国策捜査が存在しうることを明示し、メディアを額面通りに受け取ることの危険さを我々に教え、ひいては政治家の熱意に思いをはさらせ、また…
いや、この本の影響力と魅力を伝えきることなんて出来ない。多すぎ、でかすぎる。
彼の創り出す言葉は文豪のそれだ。
最高のノンフィクション!
宗男問題を知りたくなくたって愛読家なら読むべきだし、我々の暮らすこの日本に関心があるのなら、やはり一読必須。
※どちらもない方へ…
面白いから読んでみなさいって。
安く買えるんだから。
6人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
有権者が知らされるべき事はどれだけあるのだろう, 2009-01-21
日本近現代政治(史)に興味ある人なら読んでおくべきというか読んでて然るべき書だと思います。この手の内容は(私の頭に入らないだろうと)敬遠していたのですが、すらすら読めました。
著者の、端から見たらストイックな生き様に感動し、文庫版後書き(p539)を読んでは格好良いとはこの事かとしみじみ想い。
解説者の川上氏の文章前半にもどかしさを覚えたのも束の間、p545からの鋭い視点に感銘を受け。
読んで良かった!もっと早く知るべきだった!
熱心な読書家ではないですが、そう思った本は・・・・・・久しぶりです。
佐藤さんには公に発表する事を選んでくれてありがとうございます。
同時代に彼や彼の様な傑物がいることに想いを馳せつつ失礼します。
6人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
今を生きるオトナの最善の教養書, 2009-01-08
男女の数不均等から生まれる、逆転の物語は、それこそ、「侍女の物語」はじめとして、古今の文学、SFに描かれているが、その中でもこの作品は秀逸。
大奥というハーレムを男女に置き換えるというアイディアが抜群だっただけに、連載を重ねていくと、息切れするかと思いきや、待望の五巻では「もしも、男の人口が少なくなったら」の世界が性や文化、生活全般にどういうことになるのかをデリケートな筆致で説得力させていく。
「男が働かなくても、貴重品」という位置に置かれるだろうことは、今の女性の状況を見るに、ものすごくリアリティーがあります。
当時の自分は、外務省のラスプーチンという週刊誌の見出しと、筆者の不適な面構え、鈴木宗男という政治家のテレビでの傲岸不遜な態度、それ以前にテリー伊藤の外務省官僚のとんでもない頽廃ぶりの暴露本を読んでいただけに、まさに著者の言う、ポピュリズムに乗っかって、事件を見ていただけに、この本によって知ったその全貌は衝撃的だった。
外務省の親米派と親中派のパワーバランス、田中真紀子という政治家の普通ではない角栄愛とその復讐心、検察庁が「超ドメ(極端に国内志向の)官庁」で国際政治の現実がわからない、ということ、加えてもちろん、国策操作というものの存在など、本が付箋だらけになること必須。
「僕は能力がなくて、やる気が無いのが最悪と考えていたのだが、父は能力がなくてやる気があるのが、事態を紛糾させるので一番悪い、と考えていた」という東郷局長の言葉など、社会に出て働いていれば、そうそう、と腑に落ちる言葉が噴出。今を生きるオトナの最善の教養書、とも位置づけられるのでは。
6人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
人生観が変わるくらいの衝撃, 2008-12-14
佐藤優氏の著作を初めて読んだ。人生観が変わるほどの衝撃を受けました。
「国策捜査」と佐藤氏が呼ぶ一連の疑惑について、真相がどうなのか実際のところは
分からない。ただ言えるのは佐藤氏の主義主張、プリンシパルとする一番核となる部分
(それは読んだ方には理解して貰えると思いますが)については首尾一貫しており、非常
に説得力がある。真相は分からないけど個人的にはこの人物に強く惹かれました。
鈴木宗男氏についての評価が、世間一般の評価と180度違うため、この部分にはかなりの
人が抵抗を覚えると思いますが、鈴木宗男の事ももう一度きちんと知りたい、そんな気に
させてくれる本です。
6人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
曝け出された国策捜査の実態と目的, 2008-08-07
情報専門家として国家の権力を知り尽くした著者は、「国策捜査に巻き込まれた以上、勝ち目は無い」と考える。その上で、検察との心理ゲームにおいて、事実と異なる供述をすることなく、被害の最小化を図る筆者の胆力が、著者の情報専門家としてのキャリアや美学を良くあらわしている。
検察側が用意した穴(検察が構築したストーリー)を著者が選択するシーンを読むと、検察=正義の味方というイメージを持っていた自分のナイーブさや、それを助長している記者クラブに代表されるマスコミの問題点についても考えさせられる。
今回の国策捜査の目的や背景に対する著者の見立てや、田中真紀子が外相となってからの外務省の混乱に関する記述も非常に興味深い。また、川上弘美の解説も秀逸である。
今後のニュースの見方を変える、読む価値のある本である。
6人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
国策捜査とは時代のけじめ, 2008-07-16
本書は、鈴木宗男氏の「懐刀」であったノンキャリア外交官佐藤優による、背任と偽計業務妨害事件の前後の経緯と、逮捕されてからの拘置所内での検察官とのやりとり、そして事件の全貌に関する自身の分析を克明に書いた作品です。克明にという点が重要です。
著者の巻き込まれた「国策捜査」とは何か、外交官の行っているインテリジェンスとは何かが流れるようや筆致で描かれています。作家佐藤優の生まれた背景を知るのに打ってつけの本です。
6人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
友人と家族と同僚と, 2007-12-06
本書が99年〜02年ごろの橋本・小渕・森内閣での対ロシア外交と検察官との緊迫のやりとり・拘置所での生活を見事に活写しているのはすでに多く紹介されてきたとおり。
ここでは他の視点を紹介したい。私が本書を読んでショックを受けたこととして、彼・佐藤優氏と共犯として逮捕された元同僚のM氏の対比がある。
M氏は検察の厳しい追及に根負けし、検察の描いたストーリーに沿って事実無根のことをやったと認めてしまう。「僕は結局のところマイホームパパであり、捨て身で仕事をすることができなかった。佐藤さんは捨て身で仕事をしていた」というのがM氏のコメントであったという。
私が感じたのは、やっていないことでも逮捕されたが最後、徹底的に真実を求めて戦うよりも、司法側と妥協した方が早く社会復帰できるという現在の司法システムに対するショックであり、もうひとつは、家族を背負っていることが仕事や社会に対する責任を全うする上で常にプラスになると素朴に思っていたが、それがこのケースではガラガラと崩れてしまったことであった。
佐藤氏にはきちんと明記されてはいないが家族はいないのだろう。彼は日本外交官の信用を守るため、そして情報の世界でのルールを守るためやっていないことはやっていないと貫き通した。しかしそれは彼の強がりで単純に個人的な友情を大切にしたのだとも思える。
そのような彼の姿は、私には中央を追われた昔の中国王朝の官僚--たとえばアヘン戦争回避に尽力した林則徐など--に重なって見える。彼のこれからの行く末が気になってしまうが、読者にとっても外交や司法という枠を超えて、社会と個人の関係を考えさせられる稀有の一冊である。
3人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「時代のけじめ」を意味する「国策捜査」, 2009-09-08
本書は、政治家鈴木宗男の知恵袋であり、外務省のロシア専門のノンキャリア外交官が、2002年に背任と偽計業務妨害容疑で自らが逮捕された背景を自分なりの解釈で描いたノンフェクションである。本作品により、「国策捜査」という業界用語が一般用語となるとともに、読み応えのある内容と明快な文章で作者は言論界において一躍注目の的となった。
本書の中で、作者は、自分が逮捕された背景を考える。500日以上過ごした拘置所の様子を読者に紹介しつつ、「時代のけじめ」として「国策捜査」が存在しており、歴史的必然性による起こった事件であると総括する。そして、逮捕されたのは運が悪かった、と。「事件」の背景を歴史に残すため、可能な限り事件の全容を記録する本書では、検察の取調べ方法や考え方、霞ヶ関と永田町の関係、作者が行ったロシア外交の内容および情報収集活動の一端が記されており、非常に面白い。事件の背景や分析とは別に、東京拘置所の生活や人間模様も描写されている。元旦に配膳される「おせち料理」の内容も細かく記されており、筆者が堀の中の生活をいかに細かいところまでノートに記していたかが垣間見られる。
ベストセラー作品であり、あえて言うまでもないが、対ロシア外交に興味がない方でも、国家を考える上で一読をお勧めする。(2009/7/23)
3人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「本件は国策捜査だ」by検察(っておい), 2009-08-11
国による罠などという大時代のスパイ映画のようなことが、今の日本で本当にあるのか?という問題意識から読んだ(植草一秀氏の事件を追う流れで)。本書を読むと国策捜査の存在を否定するのは究極に難しいとわかる。いやむしろ「あるのが当たり前だろ」と、自身のナイーブさを責められている気分にさえさせられる。
著者の主眼は、国策捜査の存在自体をあげつらうことを完全に超えている。検察の西村氏と被疑者である著者にとって、著者の事件が国策捜査であることはすでに「所与」の条件であり、その上でどう折り合いをつけるか、という話をしているからだ。
「本件は国策捜査だ」という検察官西村氏の(!)言葉の紹介に始まる、365〜372頁の「下げられたハードル」という節が国策捜査の意味をよく伝えている。国策捜査により犯罪がつくられるのは、流れ行く時代の結節点で「けじめ」をつけるためだという。だれかが生贄になることが節目に要請される構図があるのだ。著者の事件の場合、小泉政権の弱者切捨てのなかで、相反する価値観を背負った鈴木宗男が(運悪く)国策捜査の的にされ、彼を支えた著者も連座させられた。それは誰かが指図してそうなったというのではなく、究極的にはその時代の(無)意識の一表象なのだろう。誰かが裁かれる物語で、時代全体の溜飲が下がり、次の時代へ進めるといったらいいだろうか。
したがって著者は自分が政治犯にされた悔しさにもかかわらず、時代の流れでやむえない面があったと客観的に半ば受容しているところがある(無論非を認めたわけではないが)。国策捜査に嵌められた!と嘆き訴える以上の大きい仕事を「被疑者自身が」しているわけだ。その強靭な精神には、敬服するほかない(492〜499頁の「被告人最終陳述」は感動的だ)。
辣腕外交官として活躍するのが不可能になったが、この著者には今後も言論の場で国益のために活躍してほしいと読後強く思った。
3人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
タイトルの真意は..., 2009-06-25
「国家の罠」というタイトルと世評・書評に関心を持って読んでみましたが、実際に本書を読んでみると、この「国家の罠」という表現は、単純に「国策捜査」だけを意味しているのではなく、「国家」というもの自体が抱え持つ諸問題をして、深い意味を持たせたものなのではないか、と感じた次第です。
内容の真偽については、他のレビュアーの方たちが丁寧に説明されている通り、100%信じ込むことは危険であるでしょう。ただし、それが単純に著者を偽善者扱いするものにはならないことも考慮すべきでしょう(大手出版社からの出版物として出版される→ 世間に漏れてはいけない部分はある、特に著者が‘起訴休職’中でありながらも公務員の立場である、等)。
ひとつ確実に云えるのは、本書の内容自体は書籍・読み物として非常に優れている、面白い、読者の知的・考察力的レベルを高めてくれる/満たしてくれる = 著者の知識人・作家としての能力は誠に高い、ということです。
知的なレビュアーさん達の各レビューにて指摘されているように、ところどころに‘主観的過ぎる’〜‘嘘臭い’といった表現に疑問を感じるのは事実ですが、一方で電車内の雑誌広告吊りの大見出しで簡単に騙されてしまうようなヒト達には、この本を批難する立場になく、逆に本書を読むべき、とも思います。
世間(日本国内)では、一部の間で‘陰謀論’等の議論もいくらか盛んにはなってきていますが、いまだに、大衆の大半は仕事や家庭生活など、日常生活で一杯一杯で、なかなか世の中の真実を簡単に知ることができない現状ではありますが、単に‘マスメディア’や、それらを利用する者達による‘誘導’への責任追及をするだけでなく、国民が各個人で真実を追求する努力も大事だと思います。
最後に、「国家」と個人との(責任⇔権利)関係については、改めて深く考えさせられました。
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
罠に向き合った書, 2010-08-12
真実を語りたいという欲望は、これほどのものを書かせるのだ。と、罠に嵌った筆者が気持ちのやり場を求めた強烈なエネルギーを感じました。
本書の内容は、主観的な被害者としての訴えだけではありません。
ロシアの政治とビジネスの緊密な結びつきや、交渉の時期を見るノウハウ、官僚機構に関する記述等々、記述は多岐に渡り、簡潔ながらも情報量が多い。
彼の外交官の分析眼を感じ入ることができ、結果、主張の信憑性を高めています。
わたしが一番面白いと感じたのは、筆者は立場上発生する感情の方向性をよく理解していながらも、担当の検事を前に、その人物が立場を超え人間としてどのような価値観・世界観を持っているか?ということの見極めをしたことでした。
そんな彼の視点は、多くのことを気づかせてくれます。
この書が事件に対する単なる告発本に留まらぬのは、本来なら今も第一線で活躍し続けているはずの人物が書いたものだからなのでしょう。
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ロシアと日本の政治的位置がよくわかります, 2010-08-01
ソ連崩壊による冷戦終結後の日本の外交の方向や国際情勢、ロシア情勢について知るには非常によい文献です。その当時の日本の政治・外交的情勢と深層心理的な動きがよくわかります。、あれほどたたかれる必要があったのか、鈴木宗男がどんな仕事をしていたのかがよく理解でします。非常に読みやすく知的に書かれた本です。鈴木宗男、田中真紀子、辻本清美、小泉純一郎などいった茶の間を騒がした政治家達の絡みの意味合いも考えされられました。佐藤優の文章能力の高さを感じ頭の良い人だと感じます。また、『自壊する帝国』読む必要を感じました。
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
朝日新聞「ゼロ年代の50冊」のうちの一冊, 2010-07-10
背任や偽計業務妨害の容疑で逮捕された元外務省職員が、自らの無実を明らかにする目的で事件の背景を描いた一冊。
著者は最終的に有罪とされ、執行猶予付きの判決が確定しています。したがって本書の著者の主張は司法の場では認められなかったものであり、一読者である私には本書の内容が“真実”であると確信するだけの材料はありません。
単なる著者の自己弁護の書としてしか読むことができないおそれも承知しています。
しかし、私は三つの点で本書を大変興味深く読みました。
一つ目は、司法と対峙した時の大きな恐怖と無力感を強く味わった点です。
本書に描かれる「国策捜査」は、物的証拠よりも証言によりかかったものであり、検察の厳しいその追及手法は、知力・精神・肉体が著者ほど頑健でない普通の被疑者には到底乗り越えられそうもない苛烈で理不尽なものです。
二つ目は、「国策捜査」の時代背景として著者が指摘する日本の政策転換です。ケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への、そして地政学的国際協調主義から排外的ナショナリズムへの政策転換が、--著者のいう「国策捜査」の背景を真に言いえているとまではいえないものの--日本社会の近年のありようを的確に言い当てていますし、それに対する著者の抱く危機感にも同調しないではいられないのです。
三つ目は日本のロシア外交の一筋縄ではいかない複雑さの一端を垣間見られたところです。対ロシア政策においてイスラエルのロシア研究者を重視するという、素人目にはなかなか理解しづらい背景や、北方領土への経済支援が恒久的インフラ整備ではなぜダメなのかなど、いちいち頷かないではいられない挿話が登場します。
本書によれば2030年には著者の事件に関わる一連の外交文書が公開されるとか。本書の著者の主張がどこまで真実であったのかが明からになるその時を、興味深く待ちたいと思います。
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
佐藤優氏が彗星の如く日本の論壇に現れたきっかけとなった作品, 2010-06-14
佐藤優氏が彗星の如く日本の論壇に現れたきっかけとなった作品。
非常に機知に富んでいて、読んでいて面白い。
自分も含めて日本人はメディア・リテラシーをもっと鍛えなければいけないと思う。
外務省の体質・北方領土問題・ソ連・イスラエル・拘置所・検察官僚・鈴木宗雄氏
などに関して今までは知らなかった知見を得ることができた。
ただ解説にも書いてあるとおり、
「うのみにしない」ということが肝要だが、
押し付けがましいところがない雰囲気が好印象である。
ー以下抜粋ー
「この国=日本の識字率は5%以下だからね。新聞に一片の真実が出ているもそれを読むのは5%。残り95%の世論はワイドショーと週刊誌によって形成されるのだ」。
「内政におけるケインズ型公平分配路線からハイエク型傾斜配分路線への転換、外交における地政学的国際協調路線から排外主義的ナショナリズムへの転換という二つの線で時代のけじめをつける必要があり、その交錯するところに鈴木宗男氏がいるので、どうも国策捜査の対象になったのではないか」
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
政治的立場を超えて手にするべき良書, 2010-06-08
この本を手にしたのは、
2010年冒頭の東京地検特捜部の動きが気になったから。
著者の卓越した記憶力をベースに、
東京地検特捜部の取調べの模様が詳細に展開されています。
読後思うのは「そもそも『正義』とは何か」ということ。
ロッキード事件以降、この国では世論の流れが正義を定義するようになったのでしょう。
また、本書で書かれているのは、そうした世論に期待しつつ見込みで検挙し
「犯罪のストーリー」を紡ぎ上げる恐ろしいシステムです。
法治国家・人治国家という定義を超えたこの怪物を知らしめてくれる本書。
佐藤優という名前で食わず嫌いはせず、政治的立場を超えて手にとるべき本だと思います。
0人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
煮ても焼いても喰えぬ道理, 2010-04-18
知らない世界を旅するような話しだが、
個人と組織と、社会、国家を考えさせられる、
何ともスッキリしないお話し。
「国策捜査」、官僚にも、政治家にも両方に理がある。
“みせしめ”か、なるほど。
当然の事だが、知らないことばかり。
知ってどうなるものでもないが、
明らかに自分の中で何かが変わる、実感できる一冊。
11人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
事件当事者の書いたノンフィクションものとしては出色, 2007-11-19
ムネオハウスをめぐっての事件は当時もよくその意味がわからなかった。
本書を読んでその奥深さにふれた気がした。
辻元議員に「疑惑の総合商社」と揶揄された鈴木宗男の無念さやその後の
「大地」での活動の意味が本書でようやく腑に落ちた。
勿論、当事者ゆえ割引いて読む必要があろうが、さもありなん裏事情は驚
きの連続。メディアで流布する耳障りいい「わかりやすさ」の陥穽や現実
の政治の流動感を理解させてくれる良書だと思う。
拘置所生活のルポとしても面白いが、ヘーゲルの「精神現象学」やラテン
語を勉強するあたりの高踏ぶりはなかなかユニークだ。
8人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
法治国家の実像, 2008-02-07
「国策捜査」なる言葉が辞書に見当たらないのはそれが存在しないもの、あるいは本来あってはならないものだからと解してよいだろう。これと同列の言葉に「有権解釈」があるがこれまた奇妙な言葉だと言わなければならない。なぜなら日本は法治国家という建前の上に成り立っているからである。「法の下の平等」、「司法権の独立」はただのお題目であってはならない。とうぜん検察の捜査に「国策」が介入してはならない。また法の解釈に「権力」がからんではならない。本書は現実には存在する「国策捜査」に関する見事なケース・スタディである。特捜検事の西村尚芳と被告人佐藤優は国策捜査を所与のものとして息詰まる論争を展開して止まない。それにしても嘘を言えない西村検事には頭が下がる。戦後教育の成果であろうか、本書の内容に最大の貢献をしているのは佐藤ではなく西村である。彼は被告に誠実に対処することによって被告を懐柔できると思い込んだふしがある。
これまでのところ司法の軍配は検察に上げられている。検察に国策捜査があれば、裁判に「国策裁判」があっても不思議ではない。マスメディアも捜査の過程を通じて検察の操作する情報を特ダネとして奪い合い、それを何の疑いもなく流布したのではなかったか。西村の言葉を借りれば「ワイドショーと週刊誌の論調で事件ができていく」過程に新聞もテレビも参画したのだった。
西村に比べれば佐藤は一枚も二枚も上手である。すべての真実を語っているようには見えない。西村に比べて彼の言い分は重複が多く通りが悪い。野心家で権力主義者にしか見えない鈴木宗男のどこに引かれたというのだろうか。佐藤を駆り立て続けたのは北方四島返還に道をつける熱情だというのなら立派な話だ。それを鈴木と2人の手柄にしようとしたのならば一蓮托生の思い込みも理解できないことではない。
13人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
当時はマスコミを信じていましたが, 2007-11-10
ロッキード事件やリクルート事件など、東京地検特捜部の「供述」を元に、リークを重ねて世論を形成していく捜査方法を問題にした本がいくつか出ていますが、そういった過去の洗い直しの本に比べて、本書は被告人がその状況を述べていて説得力があります。
この事件の経過については当時、マスコミの流す情報を信じ、著者をひどい外交官だと思っていました。しかし様々な紙面で見かける著者の鋭い指摘や分析にはいつも感心していますし、本書で知った信念を曲げず国益を大切にした生き方には感服します。
また特捜部の行う「国策捜査」がターニングポイントを作り出すという分析も目から鱗でした。
7人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
文庫本化まで未読とは不覚, 2008-02-17
単行本が話題になり、その後は著者が活字メディアに登場することも多かったのだが、なんとなく未読のまま2,3年が経過。全く以って不覚。
鈴木宗男事件の中心人物であった(少なくともそのように報道されていた)著者の側から事件を捉えた、当事者手記型のノンフィクション。獄中での記録の丹念さが窺える労作。
こうした事件の報道は往々にして逮捕までがピークで、裁判の行方などが大きく取り上げられることは少ない。過剰なマスコミ報道で意図的に世論が形成されることの危険性を改めて感じた。その一方で、本書もやはり著者の「言い分」であることに留意しなくてはならない。
結局のところ「事実は当事者の数だけある」のであって、それを受け止める側で何が真実であるか判断すべきものだろう。(そして、そうした思考力・判断力を持つ「インテリ」への道は容易ではない。)
2人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
強い愛国心ゆえに嵌った罠, 2009-06-30
北方領土問題の裏側、政治、外務官僚、国策捜査、拘置所などなど、普段中々見られない世界
を垣間見ることのできる作品である。
著者は、訓練された外交官として、外交の現場でも検事とのやり取りの場でも、その手法や
考え方を描き出しており、その能力の高さに感心させられる。
内容としては、逮捕された側の人間として一方的に書かれてたものなので、必ずしも客観的な
ものではないかもしれないが、著者の日本の国益のためにという想いや誇りは、純粋に賞賛に
値するものであると感じた。
2人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
賢い?キャリア官僚, 2009-05-13
■【ロシア(ソ連)とは、未だ、平和条約が締結無し】
日本は、領土拡大を画策した大東亜戦争の敗戦後、
1951年サンフランシスコ条約でソ連を除き、平和条約を
締結して法的な戦争状態を終了。領土・国境問題が残
る、ソ連とは締結されていない。今回(09年5月)のプー
チン首相来日もエンディングポイントを平和条約にして、
北方四島問題が仕切られている。
■【ムネオ議員とノンキャリア外交官の著者】
北海道出身の鈴木宗男(自民党所属うは、当然、北方
四島問題に多大な取組をしていた。懐刀として、語学堪
能なノンキャリア外交官の著者とコンビを組み、2000年
平和条約締結を目指して頑張っていた様である。
■【小泉国策とキャリア外務省による落し穴】
著者によると小泉首相になり、内政外政の転換がどうも
あったという。内政では、ケインズ型公平配分からハイエ
ク型傾斜配分。外政では、(排外主義的)ナショナリズム
の強化。などであると言う。これらに基づき、国会では外
務省からの意図的情報リークがあり、ムネオ叩きが行
われた(官僚によるマスコミ撹乱)。即ち、「疑惑の総合
商社」(辻元清美議員)、「ムネオハウス」その他一連の
ムネオスキャダルである。著者は、ムネオ逮捕の露払い
として5月に逮捕拘束、(「背任・偽計業務妨害容疑」)ム
ネオ議員も6月に逮捕拘束された。取調べは、「国策捜
査である。」と明言する西村尚芳検事により行われ、500
日余の勾留生活となり保釈、裁判闘争となっている。
■【国策の揺れ戻し】
第一回裁判の判決は、懲役2年半、執行猶予4年。著者
は直後、控訴。ムネオ議員は05年新党「大地」より国会
議員として復活。米大手証券会社倒産を引き金として世
界的不況を惹き起し、日本でも大手企業の業績不振、
年越し派遣村に代表される社会不安、年金・介護などの
政策不信など今や諸政策の見直しが迫られている。
14人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ワルぶった情報屋として活動するための準備工作, 2009-06-14
ある書評をキッカケに本書を読んだのだが、最初「何のために」本書が書かれたのか全く理解出来なかった。後半、著者が自らを司馬遷になぞらえて、「歴史の真実」を記録するためにと公言している箇所では思わず吹き出してしまったが、日本の外交戦略のお粗末さ、腐敗した外務省の体質、拘置所生活を含めた検察との対決等を忌憚なく晒して、"読み物"としては面白い。特に、対ロシア外交と北方領土問題に、ここまで踏み込んだものは余り見当たらないので参考になる。言うまでもなく、著者の潔白とは別問題である。
鈴木宗男議員(当時)との絡みで著者が逮捕された事件を「国策捜査」として批判するのだが、本書に描かれている鈴木氏の評価は異様に高過ぎる。ロシアを初めとする外交戦略に長けていて、人情に厚く気配りも出来、私利私欲を考えず使命を全うする有能な大物で、それだけに周りから嫉妬されるが自身は嫉妬と言う感情を知らない。全く信憑性がない。事件当時、私は検察の狙いはもっと大物だと思っていたが、それに対する記述は綺麗に伏せてある。著者は、この鈴木氏のために「国益」のみを考えて滅私奉公した、と言うが増々信憑性がない。この辺は、話半分以下に聞いておいた方が良いだろう。
私が感じたのは、ある程度の事実を基にして、このような虚像をあたかもノン・フィクションであるかのようにして構成してしまう著者の筆力である。外務省の複雑な権謀術策を含め八割方は真実を"克明"に述べ、肝心な二割は韜晦する。これで、あたかも全体が真実であるかのように語る。諜報戦の中での経験が生きているのであろうか。"ヤメ検"、"ヤメ警"の暴露本が横行する昨今だが、著者の能力は際立っているようである。今後、義理を重んじる、ワルぶった情報屋として活動するのだと思う。本書はその準備工作だろう。
8人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
講釈師, 2010-09-13
鈴木宗男有罪確定を機会に、積読になっていた本書を読むことにした。評判になっていた本書をなかなか読む気にならなかったのは、直感的に信用できる本ではないと感じていたことと読みにくい文章であったことによる。「講釈師、見て来た様な嘘を言い」と言う言葉があるが、国家の情報収集活動や拘置所内部のように実態を知る人間が少ない分野について、講釈師の話を鵜呑みにしてしまうことは危険であり、特に講釈師が自己正当化に必要に迫られている状況の場合尚更その注意が必要である。予想通り、本書は自己弁護や自己礼賛の言葉に満ちており、「国策捜査」に対する怒りより、根拠が自明ではない自己礼賛などの記述への不快感の方が強くなってしまった。
人間40才を過ぎたら自分の顔に責任を持てと言うが、無罪判決を受けた村木厚子元厚生労働省局長と有罪判決であった鈴木宗男、佐藤優の顔や発言内容、物腰などを比較して見ると、少なくもテレビを通して見る限り、相当に異なったものを感じさせられる。顔つきで人間が判断出来るのであれば、詐欺事件や二枚目俳優の犯罪は無くなってしまうことになりかねないし、骨相学を研究したわけでもないから、軽々に断ずるべきではないが、66年間の人間としての経験から言えば、苦労に苦労を重ね過ぎた叩上げ政治家やノンキャリ外務官僚としての辛酸を舐め過ぎた人の中には、劣等感の裏返しで常識を超えた人物が混じってくる可能性があるように思われる。あるいは、判事、検事、外交官、上級官僚として真面目に努めている人々を知っているが故に、簡単に講釈師の弁に酔わされるわけにはいかないと感じている。
10人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
この本を読むべきか, 2008-01-26
多くの人が絶賛しているので、私は簡潔に。
巻末の川上弘美さんによる解説は、この本と佐藤優さんを適切に評価していると思います。
この解説を読むと、『国家の罠』を読んでよかったとさらに思いました。
「時代のけじめ」の対象になることを通じて、新たな「時代のけじめ」を起こした佐藤氏。
手錠と捕縄を通じて、佐藤氏はさらに大きく開花したように思います。
余談ですが、巻末の解説により、川上弘美さんにも賛辞を送りたくなりました。
14人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「事実」と「真実」との違い, 2007-12-08
昨年末に「獄中記」を読んだ事で 今年一年は佐藤優という人が書いた本をすぐに買って読む癖がついた。大変有意義な一年であった。
本書が早くも文庫化されることは 日本の読書子にとっては幸せな事だと思う。
「獄中記」と時期は全く重なっている。但し 「獄中記」では書かれていなかった 検察官とのやりとりが 本書の白眉である。
主人公と対決する検事というと「罪と罰」を思わせるが 本書のドラマには 非常に清々しいものがある。
主人公と検事は利害が相反しており 語られる内容も 高度に「ドロドロした」ものだ。しかし そんな対決の中で 両者が友情を育てていく姿は 感動的である。
両者とも かたや検察、かたや容疑者という極めて微妙な立場ながら お互いにその立場を超えたところで 人間同士として語り合っている部分は実に読ませる。お互いにリスクをとりながら相手を思い遣る姿には 若干目頭すら熱くなった次第だ。
本書はノンフィクションだ。但し ノンフィクションが語る「事実」が「真実」であるかどうかはまた別の話だ。「事実は真実の敵だ」と喝破したのは ドンキホーテである。それほどその両者は似て非なるものだ。
佐藤優が言う通り 本書が「真実」かどうかが分かるのには なお相当の年月が必要なのだと思う。但し その年月の長きに十分耐えられそうな一冊だ。
3人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
外交の裏舞台, 2009-03-29
外交の裏舞台とはこんななのかと大変興味そそられる本です。
特に著者のロシアにおける仕事は大変おもしろいです。
また、一転国内で逮捕起訴されるのですが、その獄中記もすさまじい
といったかんじです。
扱いにくい被疑者という言葉がぴったりくる感じです。
著者の今後の活躍が楽しみですし、二十数年後の外交文書の
公開も楽しみです。
9人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ノンフィクションなのですが, 2007-11-26
つい、だまされないぞっと思いたくなるほど衝撃的且つ興味深い内容でした。
国策捜査等のキーワード、鈴木宗男氏、そして著者である佐藤優氏。
現代の時間感覚からすればすでに「終わった話」に近いイメージがあったのですが
読中かなりリアルにその時の新聞記事の見出しなどが思い出されました。
氏の著作を読むのは本作で2冊目でして、
最初に読んだのは発売間もない頃の「自壊する帝国」だったわけですが、
正直なところ本作をもっと早い時期に読んでおくべきだったと今頃になって思いました。
文庫版¥740でここまで楽しませてもらってどうもありがとう。
8人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
文庫化を待っていました, 2008-01-10
漠然と外交に興味を持っていたものの、初めて読んだ一冊。
全体に渡って、いかに体を張って命をかけて外交に望んでいるかがひしひしと伝わってきた。
興味深かったのは、外務省官僚として、政治家に対してどういう態度で接し、政治家の言葉の裏をどう読んでどういう態度を取ってきたかの部分。こういうところは書いてくれたものを読まなければ一般国民にはわからない。
インテリジェンスに関わる過程で鍛えた記憶力での再現なのか、それとももともと小説家としての会話構成力の素質が備わっているのか、人物のやり取り部分(著者と政治家、そして検事)の会話部分はかなり読ませる。とても引き込まれた。これがこの本の醍醐味だと思った。
ただ、一部の官僚の言葉としてでてくる「国民には本当の識字率なし」の部分は、あなたがた外務省官僚が外交やってる間にこちら一般国民は違う仕事をやってるんだから当然じゃないの?と思う(もちろん有権者としてメディアからわかる範囲でできるだけ賢明な判断をする努力は大事だけど)。それに、外交のような逐一国民に知らせずに動向を知らせずにプロとしての信頼感を元に進めて行く仕事になればそうなるのはなお当たり前のことだ。ただ、それによって生じる官僚と一般国民の間の認識というのはなかなか埋められないから、むずかしいのだろうけど。(だいたい、この本で語られている佐藤氏のようなライフスタイルでは、家族だってまともに持てやしない)
検察が官僚や政治家を起訴するためのハードルが、マスコミが騒ぐものさしまで低くなっているというところがあるが、これは最近医療事故関係の裁判についてある医師が書いた批判にも当てはまることだ。多くの人々が関わるゆえに一般人が監視・批判しなければならない物事でも、一方ではプロにしかわからないことは多い。こういう場合、一般人vs専門家で対立するしか道はないのだろうか?と考えてしまう。
この本を前から読み始めるといろいろ著者に対して言いたい疑問点が出てくるが、それが見事に後半の検事と著者の取調べの会話の中で検事の口から言葉になって出てくる所が面白かった。これが著者の意図だとすれば結構計算されているのではないだろうか。また、検事がものさしを低くして一般国民の目線になっている、というようなことをあらわしているようにも思える。
巻末の解説はインテリジェンスや政治の専門家が書くのかなと思っていたら、そうではなかったのだが、これも結構新鮮だった。「諜報」に興味をそそられ、著者が参考文献などに取り上げている「スパイのためのハンドブック」とか「陸軍中野学校」のDVDボックスまで買うきっかけになった1冊です(笑)。
2人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
凄い本, 2009-03-22
この本を読むと世の中の難解さに絶望しそうになる。
人が人を理解するのは、難しい。
検察と容疑者、日本とロシア、
真実と嘘、権力と国策捜査、何だろうこの国の制度は?
そして、すごく長くて切ない本だと思う。
でもなぜだか、人生を肯定できる勇気が出てくる。
作者が人生に立ち止まる、
お世話になった人や友達のことを思って
それが何だか、この本の救いなのかも知れない。
作者が全身全霊を込めたすごい本だと思う。
10人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
国策捜査の賜物?, 2007-11-16
国策捜査が官界に埋もれていた知性を発掘した。このことは担当の西村検事にしか予見できなかったことであろう。
5人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
難しいお話ですね, 2010-07-06
外交と逮捕と操作の話が大部分かな。
政治的な部分は具体的な人名やらよくわからん固有名詞が出すぎて意味不明。検察に睨まれたら大変なんだなーってことがわかった気になる1冊。そこそこ読みやすい気がするけど、もう一度読みたいとは思わない。まあ勉強にはなったかな。
9人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ラスプーチン, 2007-11-17
「外務省の「外務省のラスプーチンと呼ばれて」なんて色気のある帯タイトルに対して
前半は淡々と北方領土返還実現のためにあの手この手で仕事をこなす外務官時代の記述が続く。
政治の堅苦しいお話になりそうなところを、なにより著者佐藤氏の驚くべき記憶力に感嘆しながら、一気読みできるおもしろさ。
飲んでばかりのロシア人政治家とのお付き合いがまたウケます。
中盤の逮捕劇から検察官とのやり取りがオモシロい。
担当検察官が信頼できる人格の人で、佐藤氏はよく「彼に引きずられないように」
と自戒するが、実際引きずられているのは検事かはてまたこの本の読み手か、、、。
なあるほどすごく地味だけど確かにラスプーチンだわ。
と呼ばれて」なんて色気のある帯タイトルに対して
前半は淡々と北方領土返還実現のためにあの手この手で仕事をこなす外務官時代の記述が続く。
政治の堅苦しいお話になりそうなところを、なにより著者佐藤氏の驚くべき記憶力に感嘆しながら、一気読みできるおもしろさ。
飲んでばかりのロシア人政治家とのお付き合いがまたウケます。
中盤の逮捕劇から検察官とのやり取りがオモシロい。
担当検察官が信頼できる人格の人で、佐藤氏はよく「彼に引きずられないように」
と自戒するが、実際引きずられているのは検事かはてまたこの本の読み手か、、、。
なあるほどすごく地味だけど確かにラスプーチンだわ。
26人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
自己弁護にしか聞こえない, 2007-11-13
例の事件についてや、外交上のやりとり、外務省内の権力闘争などが
生々しく書かれています。
が、新聞・TVなどのマスコミの言葉も100%信用することはできませんが、
著者の書いていることも自己弁護に聞こえ、100%信用できませんでした。
文章力はありますが、それは官僚としての文章力であって、読み物の
書き手としては構成力も含めイマイチだと思います。
Revilist, developed by
yto and powered by